歯科医院でAIを使うなら、最初の一歩は「話しかけること」から

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「何から始めればいいですか」

最近、先生方との打ち合わせの中でも、こういった相談を受けることが増えました。歯科医師の先生方だけではなく、他業界の経営者からも同じ質問を受けます。

AIへの関心が高まっていることは間違いない。しかし、何から手をつけていいか分からない。そういう状態の方が、本当に多いと感じています。

私自身、複数のプロジェクトを運営しながら、AIを業務の中核に据えています。主にClaudeというAIを使い、月次の損益管理から議事録作成、マニュアル整備、コンテンツ制作、コーディングまで、かなりの業務をAIで並行して回しています。

その経験から言えることが一つあります。

私はほぼ独学でAIを使い込んできましたが、やはり最初の一歩は「何を使うか」以上に、AIに話しかける、相談する、これを日常化すること、習慣化することがすべての基盤にあったと考えています。

まず、対話を始める

1年前、AIが話題になり始めた頃は、「いかにAIに賢く動いてもらうか」が重要だと言われていました。プロンプトエンジニアリングという言葉が流行り、指示文の書き方のテクニックが注目されていました。

しかし、AIの精度は日々上がっています。私が理解している以上に、その進化は速い。爆速です。そしてこれからも、より速いスピードで進化していきます。

その未来を前提としたとき、今の段階でAIを使っていない方がまず取り組むべきことは、いかに賢く指示を出すかではありません。重要なのは、AIを日常的に使うこと。AIがなければ困る、という生活習慣を身につけることです。

難しいことは必要ありません。これからAIが進歩していくことを考えると、AIの方が私たちに歩み寄ってきてくれる未来が約束されているからです。極論を言えば、勉強する必要なんて本当はないのです。

まず、何でもいいからAIに話しかけてみてください。

「明日のスタッフミーティングのアジェンダを作りたい」「この患者さんへの説明文を考えたい」「求人原稿のたたき台がほしい」。

完璧な質問でなくていい。「ちょっと相談なんだけど」くらいの感覚で話しかけてみる。AIは、驚くほどちゃんと汲み取ってくれます。

タイピングをやめる

ここで一つ、決定的に重要なことをお伝えします。

AIを日常使いしている人たちが、大前提としていることがあります。タイピング入力をやめていることです。

音声入力を使ってください。スマホのフリック入力も必要ありません。

タイピングは将来的に必ずなくなります。キーボードを打って文字を入力する動作、フリックをして文字を入力する動作。声を発せない場所で補助的に行うことはあっても、必ず音声入力がメインになっていきます。

もちろん、この文章も音声入力で執筆しています。

過去に音声入力を試したことがある先生は多いかもしれません。精度が低くて使い物にならなかった経験をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。しかし、今の音声入力の精度は当時とは別次元です。私はiPhoneを愛用していますが、iPhoneの標準の音声入力も非常に優秀です。デスクトップで作業する際は、Aqua Voiceというアプリを使ってマイク入力をしています。

音声入力を使うと何が変わるか。劇的に速くなります。劇的です。ここまでの文章を音声入力していますが、3分もかかっていません。

キーボードに向かって文章を打つとき、人は無意識に「正しい文章を組み立てなければ」と構えます。主語と述語の関係、接続詞の使い方、文の長さ。タイピングしながらこれらを同時に考える。この負荷が、文章作成の難しさですし、AIへの入力を面倒にしている原因の一つです。

音声入力であれば、その負荷がなくなります。話しかければいい。100%完璧な文章で話す必要はありません。多少言い回しが崩れても、話が前後しても、AIはちゃんと意図を汲み取ってくれます。

もちろん100%ではありません。しかし、これから精度はさらに上がっていきます。そして何より、言葉を選ばずに言えば、よほど読解力のない人と会話するより、AIの方が賢く文脈を理解してくれます。

日常使いの入り口

音声入力でAIに話しかけることに慣れると、「AIに聞いてみよう」という発想が自然に出てくるようになります。これが、日常使いの入り口です。

メールの返信に迷ったとき、「こういう内容で返信したいんだけど、文面を考えてくれる?」と音声で話しかける。院内の掲示物を更新したいとき、「予防歯科の大切さを伝えるPOPの文案を作ってほしい」と話しかける。スタッフへの連絡事項をまとめたいとき、「明日の朝礼で伝えたいことが3つあって——」と話し始める。

どれも1分もかかりません。タイピングであれば5分かかる作業が、音声入力なら1分で終わる。この差が、「面倒だからやらない」を「すぐできるからやる」に変えます。

1点、誤解のないようにお伝えしますが、音声入力といっても、ChatGPTの対話型AIモードのことではありません。音声入力でテキストを入力しながら、チャット形式でやり取りを行うということです。

AIの特性をつかむ

日常的にAIを使い始めると、AIの特性が体感で分かってきます。こういう頼み方をするといい答えが返ってくる。こういう聞き方だと的外れな回答になる。こういう情報を一緒に伝えると精度が上がる。

これはマニュアルを読んで学ぶものではありません。毎日使う中で自然と身についていく基礎スキルです。

もちろん私も並行して、SNSやYouTubeなどで最新情報をキャッチアップしています。しかし、AIの進化がテクニックを上回ってきます。「こういう使い方をするとより良質な回答が引き出せる」というテクニックは、どんどん小手先のものになっていくのです。

そうした背景を踏まえた上で、今使っていない先生がまず取り組むべきことは、やはりAIの特性をつかむために毎日話しかけること。これに限ると思います。

1日5回、何でもいいからAIに聞いてみる。1週間で35回。1ヶ月で150回。この積み重ねが、AIを使いこなしている人と、まだ始められていない人の差を確実に生んでいます。

体の不調を聞いてみるのもいいでしょう。晩御飯の献立でもいい。愚痴や悩みを打ち明けてみるのでもいいと思います。

ぜひ、それを音声入力でやってみてください。

業務の棚卸しも、AIと一緒にやる

自分の医院でAIをどう使えばいいかを考えるために、業務の棚卸しをやってほしいと思います。ただし、一人で紙に書き出す必要はありません。それこそ、AIと一緒にやってみてください。

「うちの医院で毎日やっている業務を整理したい。受付、治療、事務、スタッフ管理に分けて、どんな作業があるか一緒に洗い出してくれる?」

こう話しかけるだけで、AIが質問をしながら業務の全体像を一緒に整理してくれます。チャット形式の対話の中で、「あ、そういえばこういう業務もあった」と思い出す。AIと対話すること自体が、棚卸しのプロセスになります。

私であれば、こう頼みます。「一般的な歯科医院の1週間の業務を一覧で書き出してくれる?」。たたき台をリストアップしてもらったあとに、自分の医院でやっていることを付け足したり、やっていないことを削除したりするプロセスを踏むと思います。

ツール選びでも、業務整理でもなく、まずAIに話しかけること。そのために、音声入力を使うこと。これが、AIを使いこなすための最初の一歩です。

まずは誰もいないところで。そっと、スマホに話しかけてみましょう。

財津 昇


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